chapter2 想いもよらない収穫 「球」の認識


      
1.「球の力」とは?

 この、「骨盤底筋運動」を通じて、運動を通じて身体に錬成される「力」を認識することが出来ました。
それは、

  身体の一点、丹田より全方向へ向かって同量の力を発揮する、「球型の力」

です。



      2.実験!「球」の力と動き

 〇自然の道を歩いてみる

 現代人は、当たり前の様にアスファルトで舗装された道路を歩くため、歩行に不便はなく、そのため、脚は真っ直ぐに伸びた
「突っ立ち歩き」になりがちで、結果、歩行の際に頭が上下している様に観える「ぴょこぴょこ歩き」に成って閉まっている方が
多く見受けられます。

 それでは、転倒には充分に気を付けて、アスファルト舗装されていない、自然の上を歩いてみます。
出来るだけ長距離歩いてみる事が望ましい様です。

 自然の道は舗装道路と違い、所謂「でこぼこ」していたりで、踏み出した一歩先の路面が、先刻までの一歩一歩と同じ表情をしているとは限りません。気を抜いて、「今まで歩いた路面と同じだろう。」と気軽に考えて歩くと、思わぬ形で脚を取られ、足首を挫いてしまう
かも知れません。
その為、

 若干、腰を落とす事で腰をしっかりとさせ、脚先を活かして踏みしめる先の安全を確かめながら
進む事と成ります。
 結果、「抜き足、差し足」の様な歩法と成らざるを得ません。自然の路面には縦にも横にも、思い
もよらない段差などが有るものです。このとき腰は、全方位からの、着地の反作用に対応出来得る
様に、「一点から全方向へ向かって同量の力が漲る状態」です。
 この状態を観察することが、「球の力」を理解する一助となる、と考えます。



       3.「球の力」、その武技的使用

 浦和で、吉丸師範にご教示頂いておりました頃、投げ技を使用する際に、「球の型」を利用すると効果がある事には、体験的に
気付いておりましたが、何故効果があるのかは不明でした。
 ただ、「相手も無意識ながら同様に『球の力』を体している。」と考えますと、無意識に「球の力」を体している所へ、意識して
「球の力」を活用する訳ですから、意識して活用している者が些か有利だったのだろう、と考えます。

 ここで大切なのは、我も彼も、認識している、していないは別として、「球の力」を体している、という事です。

 昭和60年頃と記憶しておりますが、吉丸先生と副師範との会話の中で、吉丸先生が、「以前、先生に『”投げ”は円を利用するのですか?』と伺った事がある。先生は、『それはそれだが、敢えて言うなら、”円をずらす”だ。』と仰っていた。」とのお話がありました。

 吉丸先生と副師範の会話は合気、中国拳法から整体、築基まで多岐に渡られますので、どの文脈でのお話かは不明ですが、
「円をずらす…、ずれる円?」と、筆者の心にもそのお話が残っております。

 もしかすると、このお話は、「球の力」を解明するヒントと成る可能性が有るのかも、と考えている次第です。

 なお、吉丸先生より御教授頂きました技を、もう一度、「球の理」を意識して見直しましたところ、「球の理」とそこから派生する
身体操作は、吉丸先生に御教授頂きました「身体の動作」に、全く矛盾するものではない、という事が認識出来ました。



       4.いまひとつ解らない、「球の力」とは?

 「骨盤底筋運動」に依って、身体の一点から球形に同一量の力を発揮する「球の力」を認識出来る事が解りました。

 「球の力」を無意識に体している相手に対して、「球の力」を意識して使用する事が、投げ技では有効な一要素である事が
解りました。

 前述の通り、「骨盤底筋運動」を行うと「球の力」を認識出来る事が解りました。
この過程に伴いまして、筆者の腰痛が快癒に向かった事実を観察しますと、行い方次第で、「球の力」を追及する運動は、多くの
方々向けの健康法として活用出来る可能性が有ります。

 筆者といたしましては、是非、この「力」を多くの人々向けの健康法として活用出来るよう、研究致したく存じております。


【閑話休題】「球の力」を使用する場合、その動作は、外観としましては「円の動き」の様な動作です。
「円の動き」につきましては、「円の動き」で華麗に相手を制してしまう美しくて素晴らしい武道、合気道の演武などを拝見致しますと
その有用性は充分に証明されているかと存じます。「球の動き」は、動作と致しましては、この素晴らしい「円」を、「球」を満たす様に
展開した型と謂えるでしょう。



      5.では一体、「球の力」とは何なのか?

 「骨盤底筋運動」で認識出来る「球の力」は、運動の結果もたらされる事象であり、その事自体は、スポーツの範疇です。

 では何故、「球の力」は歩行にも有用で、また体術にも有効に利用出来るのでしょうか。また、私たちが気付いていない活用法が
あるのかも解りません。



       6.「球の力」についての、ひとつの考察

 私たちは、地球という「球型」の惑星に生息しております。

 地球は自転と公転という運動を繰り返しております。ですが大多数の方が、この運動が自身の身体に何かしらの作用を及ぼして
いる、という、その作用は認識されておられません。

 地球には重力があります。これは、「引力」と「遠心力」を合わせた力ですが、大多数の方が、「引力に引っ張られてうずくまりそうだ。」
「遠心力で宇宙まで飛ばされそうだ。」とは仰いません。つまり、「作用の認識」がない、という事です。

 ちなみに、地球には大気があります。人間一人ひとりの身体に掛かる大気圧は、かなりの重さがあるといいますが、これまでの
お話同様、大多数の方が「大気が重くて肩が凝る」とは仰いません。

 この様に、この地球という球形の惑星が、その運動、活動に依り、そこに生息する万物に何かしらの作用を与えており、若しやもする
と、この球形の惑星が行う運動が、球形の惑星に生息する私たちに及ぼす作用の内でも、私たちが未だに識る事が出来ない、認識する事が出来ない作用が有って、「球の力」の活用とは、その作用を活用する手法なのかも知れません。または、物理的に解説出来る、
「球形」特有の事象なのかも解りません。「大東流合気柔術 片手捕り 二元引く合気」に「球」を用いますと、興味深い事象が観察
出来ますが、これは理由が説明出来そうです。

 いずれに致しましても、その解明には今暫く時間が掛かるものかと存じます。

 

「chapter3 付録:大きく構えて。「球の世界」を「天球の世界」に展開してみたら」へはこちらから


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