第2席 (2008年 4月13日掲載) 解説

 護身武道について説明申し上げております。吉丸師範の提唱された「護身武道」につきましては、打撃を格闘技術に求め、相手を投げる、極める際には合気道の逆関節技を使用する、という優れた格闘技も存在している様ですが、「術理」の段階で、合気柔術の術理である、「くっ付く」という事を重視されている点が大きな特徴です。

 体格的、身体能力的に秀でた方と打ち合った場合、いつしか後ずさり、追い詰められてしまいます。この事実に対して、護身武道では「くっ付く」、即ち「前へ出る」事に解決を求めております。日本剣術にあります、「切り結ぶ 刃の下こそ地獄なれ 一歩進め 後は極楽」という言葉通り、前へ出てくっ付き、打ち合いを避ける事で体格的、身体能力的に劣る者も勝機を見出す、という戦法を採るわけです。この点が「護身武道」と謂われる所以です。

                                                               (2017年 4月 9日)
第二席 護身武道

 筆者が吉丸先生の許へ入門した動機は、「当て身」の威力を体験して、何とかこの技術を習得したい、との想いからですが、後々、吉丸先生の指導される「合気拳法」に魅力を感じることとなった理由の一つに、「護身武道」という理念があります。

 「護身武道」とは、「弱者が身を護るための武道」です。 所謂、多くの「護身術」は、「空手」を使った「護身術」や、「柔術」を使った「護身術」であって、その前提は、「空手」、「柔術」など、「格闘技」を習得している事であって、一般の人が突然、修得しようとしても、容易ではなく、それならば「格闘技」を直接修得する事の方が、近道であると考えます。
皆さんも、「格闘技」を修得した人の強さ、身を護ってなお余りある技術の豊富さをご存知でしょう。
 では、「格闘技を使用した護身術」を修得する近道である、「格闘技の修得」の目標はどこにあるかと申しますと、それは、多くの場合、その「格闘技」内の「競技」であると謂えるでしょう。 筆者も、もちろん「格闘技の競技」に興味があって、よくテレビ観戦をしております。ボクシング、総合格闘技、空手、柔道などなど、その技術の素晴らしさ、華麗さ、日進月歩で飛躍するレベルなど、正に驚きの一言です。 優秀な選手たちが切磋琢磨した結果なのでしょう。「護身武道」では、技術そのものの目標を「護身」に置き、「護身」が 必要な、「選手」と称されるような運動力が優れている人に比べて、若干劣るような人が修得できるように編纂された武道である、というのが、 筆者の認識です。 平たく申し上げるならば、「弱者が身を護るための武道」という事です。

 「身を護る」という事について、筆者は、最大の護身は「戦わない事」であると考えます。ですから、「走って逃げれるのであれば逃げるべきであるし、謝ってすむのであれば、謝るべき」との認識です。それでも向かって来たさいに発動されるのが、「護身武道」である、と謂う事です。
 それから、「弱者のため」と申しますと、「練習不要、筋肉鍛錬不要」と お考えになる方もありますが、その様な技術もあるのかも判りませんが、「護身武道」では、練習も必要ですし、筋肉の鍛錬も必要となります。但し、鍛錬のやり方が違うといえるでしょう。

 筆者が柔道、空手を習っている頃は、背筋を鍛えるというと、腹ばいになって、人に脚を押さえてもらい、上体を上下する 運動や、重量物を利用する運動が多く、すぐにへとへと(いまでもこのように表現するのでしょうか)になってしまったものですが、「護身武道」では、基本的には、「一日中背筋を伸ばす」という鍛錬方法を採っております。この様な鍛錬であれば、 へとへとになる事もありませんが、効果が出るのも、長期間スパンです。
 また、足腰を鍛える運動として、四股が有名ですが、その他にも脚を鍛える方法があって、これは、初めて観た際には、筆者など、到底出来るものではないと感じるほどのものですが、実際にやってみて、初期の苦しみを越えてみると、実は、のびのびとした運動であると判ります。もちろん、筆者が少ない回数で満足し、勝手にそう感じているだけかもしれませんし、他にも 激烈な鍛錬方法があるものの、「護身武道」ではそれらの鍛錬を採用していないだけなのかもしれません。ただ、スピードを乗せて反復運動する「短距離走」タイプの鍛錬・運動が苦手な方には、「護身武道」での、じっくりとした鍛錬・ 運動が適している場合があると考えます。

 現代スポーツでは多く、「短距離走」タイプ の鍛錬・運動を見受けますが、これらが苦手な人、いわゆる、「弱者」のための武道、と謂える理由の一つです。更に、吉丸先生の編纂された「護身武道」では、修得方法も独特で、 修得のために 「使用と学習」ということを明確に区分されておられ、ある段階まで、修練が進んだ際に、「こうすれば更に良い」という、「秘伝」を 伝授されて、技術が一段上がる、という方法でした。後の席で話題としますが、「護身武道」でいう「秘伝」とは、このようなものである、という事 です。

 品川体育館で「護身武道」を専門に学ぶ方は、四~五名でしたが、 吉丸先生が直接、手本を示して下さり、さらには、直接指導して下さるわけですから、大変貴重な事であった、と、認識しております。

                                                           2008年 4月13日
                                                           相顕舎の庵 第二席 了



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